LittleBear Communication Disorder's

発達障害者の趣味と考察と日記を適当に

十二国記 風の万里 黎明の空 の感想

とりあえず巻末のレビューが優れていた。

陽子、祥瓊、鈴の視点を変えて一つの物語を構築する。そういう作りになっていた。そのため上下巻だが、そんなに読む時間は取らない。とはいえ、祥瓊と鈴は底辺なところから話が始まるので読むのが辛かった。また、文中で陽子が祥瓊と鈴と一緒くたにされるのは1巻かけて成長した陽子の株を下げるようでつらたんだった。

 

上巻部分で酷い苦労をして、下巻部分で「世の中みんな大変なのね~」ってだべって、それで世間のこと知りました。成長しました。みたいな書き方で雑だと思った。これまで丹念な描写で悲劇見舞わせてたのに、下巻で「やっと悟りました」「こんな経験しました」「まじかー」3人苦笑。という団欒のやりとりがあまりにも軽くてハイファンタジーが崩れてました…。

 

祥瓊や鈴の性格はお前らの不幸とか知らないし、私が今辛い話してるんだし、ってキャラだから下巻でお前らなんでいきなり物分り良さげなフリしてんの?って思う。(´・ω・`)

 

陽子は陽子で何かずっと訳知り顔で苦笑してるし、戦闘狂になってるし、女子会で私実は景王なんですわ、って簡単に身バレやっちゃってるし、禁軍来たところで今度は全員の前で盛大にネタバレして、やれやれこれは流石に王の出番ですわ、陽子君臨しますわ、ってなってるあたりが辛い。王のパフォーマンスのための場が整ったわけですね…と。スーパー陽子タイムとでも言おうか…。

 

だいたいの戦果はケイキの指令のお陰だし、ケイキ自体も血の匂いのするとこに呼んじゃってる。キリンは本来あんまり健やかじゃないとか言われてる時点で無理させすぎである。

 

負の部分、あるいは現実的なシーンの描写は泥臭くてキメ細かいんだけど、ハイライトになるシーンで一気にファンタジーになっちゃってるので浮くんだろうなー、と思う。

 

あと地味に祥瓊と鈴の能力が高い。何故、騎獣を操る能力が身についてるんだろうか(´・ω・`)祥瓊に至っては王宮の暮らし向きに関しては妙に詳しく「何も知らなかった」とは言えない。祥瓊は籠の中の鳥という感じだったし、鈴は自分から何もしろうとしてこなかったし。なのになぜあんな過酷な度を敢行出来るだけの能力があったのか…謎に満ちている。

 

あと何か二人共陽子殺してやろうとか思って景に来てる時点で、読者からすると、やばい人たちである。祥瓊は王に成り代わろうとしてたし、鈴は身内の恨み思い知らせてやる、とか思ってたのにすぐ変節してる。二人の誤解を解くシーンは力を入れるべきだったのに、流された感がある。

 

その変わりようが何か嫌だなぁと思った。祥瓊は自分の地位を回復させようとし、鈴は自分の恨みでやること決めて仇討ちするのをまた他人のせいにしてる。清秀の恨みを晴らす気でいる(実際は鈴の恨み)。

 

そういう根本的な精神的な歪みが物語上で晴れたとは言えない状態で3者が揃い決戦しちゃった時点で余白が足りなかったと思う。

 

だから、結局、何かショウコウやガホウとかいう屑がいてあいつら許せないわって話にフリーライダーしてきた逃亡者二人(祥瓊・鈴)という話でしかなくなってしまったと思う。

 

最初の時点でもう少し祥瓊や鈴の愚かさを値引きしとくべきだったと思う。つまり「他人に少しは同情することが出来る」余地を書いておくと下巻に間に合ったと思う。

 

何か里に降りて老師に教えを請うていたら襲撃されて、老師が攫われて、それを追ってたら何かすげー悪いことしてる官吏見つけてそのレジスタンスに紛れて成敗したら、国の中枢にいる諸悪の根源も釣れました、という話に祥瓊と鈴の不幸自慢大会加えただけという感じ…。

 

祥瓊は股裂き刑にされそうになった時点で父親のしたことの惨たらしさを悟るくらいの洞察力があって欲しかったし、少なくとも自己正当化しなければ良かったし、鈴はなんか民の暮らし向きを見てきなさいと言われた割に性根が変わらないままずっと来て清秀が具合悪いというところから進んでない感じがある(´・ω・`)

 

そこからの鈴の行動は清秀を殺したショウコウと陽子殺してやるわ!でしかなく、何の成長もそこには無かったわけで。

 

祥瓊は景に来てからも何か投げやりな感じがあったし、何か勧善懲悪出来れば正義みたいなところがあって、そのまま陽子に合流してる気がするわけで。

 

要するに陽子以外は問題児二人組のまま、という感じ…。その2人分の問題を投げ出したまま物語が終了してる感じがした。

 

陽子自身も何か国に降りたらいい人材見つけましたわ、って感じで、何か即物的なものが拭えない。せめて浩瀚との会合みたいのが必要だった。結局、市政の人の価値判断を信じてるきらいが拭えないですね。えっ、浩瀚実はいいヤツなの!?→重用。ってノリが(´・ω・`)あと元将軍超強い、設定とか。そういう世界なのか…?

 

エンホ先生の正体は普通に察することが出来た。まぁ、そんな感じかな。難しい漢字が多くても内容が難しいわけじゃない。寧ろ、ツッコミどころも多い。物語中ではちょい役の珠晶のキャラが際立ってよい。前巻の尚隆もやはり優れた人物だったので、今回未熟な人間がずっと主役だったので辛かったと思う。正直、陽子のパートだけ読んでればokだけど、それだと珠晶に会えない。